COLUMN

【福岡県 最低賃金1,114円】
「うちは時給で足りている」会社ほど確認を
——月給の社員さんも対象です

2026年10月29日|マミ社会保険労務士事務所(北九州)

こんなお悩みはありませんか?

「パートさんの時給は上げたから、もう大丈夫」
「正社員は月給だから、最低賃金は関係ないと思っていた」
「手当をいろいろ付けているので、合計すれば足りているはず」

福岡県の最低賃金は、令和8年(2026年)10月4日から、時間額1,114円になりました。
そして最低賃金は、パートさんだけの話ではありません。月給の社員さんも対象です。

先に、確かめ方の全体をお見せします。

確かめる順番やること
①給与明細から、最低賃金に入れない手当を外す
②残った金額を、1か月の平均の所定労働時間で割って、時給に直す
③その時給が 1,114円以上かどうかを見る

総支給で見ると足りていても、①で手当を外すと下回る——ということが、意外とよくあります。

福岡県の最低賃金は、10月4日から1,114円です

福岡労働局の発表では、福岡県最低賃金は次のとおりです。

項目内容
時間額1,114円
効力発生日令和8年10月4日
答申令和8年8月10日(福岡地方最低賃金審議会)
【出典】福岡労働局「福岡県最低賃金の改正について」(2026年10月29日確認)

最低賃金は「目安」ではありません。法律で決まった、守らなければいけない線です。

「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。」

【出典】最低賃金法 第4条第1項(e-Gov法令検索)

さらに、最低賃金に届かない約束をしていても、その部分は無効になり、最低賃金と同じ約束をしたものとみなされます(同条第2項)。
地域別最低賃金を下回って支払った場合には、50万円以下の罰金という罰則もあります(同法第40条)。

最低賃金に「入れない」賃金は、6種類あります

ここがいちばんつまずきやすいところです。
給与明細の合計額を、そのまま比べてはいけません。

法律では、次のように決まっています。

「次に掲げる賃金は、前二項に規定する賃金に算入しない。
一 一月をこえない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの
二 通常の労働時間又は労働日の賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの
三 当該最低賃金において算入しないことを定める賃金」

【出典】最低賃金法 第4条第3項(e-Gov法令検索)

これを、厚生労働省はこう整理しています。

入れない賃金たとえば
1臨時に支払われる賃金結婚手当など
21か月を超える期間ごとに支払われる賃金賞与など
3所定労働時間を超える労働への賃金時間外の割増賃金(残業代)など
4所定労働日以外の日の労働への賃金休日の割増賃金など
5午後10時〜午前5時の労働への賃金のうち、通常の賃金を超える部分深夜の割増賃金など
6精皆勤手当、通勤手当、家族手当
【出典】厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」(2026年10月29日確認)
【根拠】1〜5=最低賃金法 第4条第3項第一号・第二号、最低賃金法施行規則 第1条/6=最低賃金法 第4条第3項第三号(それぞれの最低賃金で「算入しない」と定める賃金)

「通勤手当・家族手当・皆勤手当の3つを外せばいい」と覚えている方が多いのですが、それだけではありません。
残業代や賞与も外します。

とくに気をつけたいのが、固定残業代(みなし残業手当)です。
名前が「手当」でも、中身が時間外労働への支払いであれば、上の3番にあたり、最低賃金の計算には入りません。
「基本給は低めでも、固定残業代を入れれば足りている」という給与の組み方は、いちど見直してみてください。

月給の社員さんは、時給に直して比べます

月給の方は、月給を「1か月の所定労働時間」で割って、時給に直して比べます。
これも、省令に書かれています。

「月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異なる場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額」

【出典】最低賃金法施行規則 第2条第1項第3号(e-Gov法令検索)

多くの会社は、月によって休みの日数が違います。その場合は、1年間の所定労働時間を12で割った「1か月平均」を使います。

計算してみます

たとえば、こんな社員さんがいたとします。(実在の方ではありません)

- 1日8時間・年間の所定労働日数260日 → 年2,080時間 → 1か月平均 約173.3時間
- 給与:基本給170,000円/職務手当15,000円/皆勤手当10,000円/通勤手当10,000円(合計205,000円)

比べ方計算時給にすると
❌ 合計額で比べる205,000円 ÷ 173.3時間約1,183円(足りているように見える)
⭕ 正しく比べる(170,000円+15,000円)÷ 173.3時間約1,067円(1,114円を下回る)

皆勤手当と通勤手当を外すと、時給にして約47円足りません。
この方の場合、最低賃金に入る部分(基本給+職務手当)を、月に193,094円以上にする必要があります(1,114円 × 2,080時間 ÷ 12か月 = 193,093.33…円。1円未満は切り上げて考えます)。

総支給20万円を超えていても、こうなることがあるのです。
しかも、この確認はパートさんではなく正社員さんの話です。

中小企業の現場では、こうなりがちです

私は社労士になる前、7社で総務・人事をしてきました。
最低賃金の改定のたびに何度も見てきたのは、こんな場面です。

ひとつめは、パートさんの時給だけ直して、正社員の月給を見ていないことです。
「時給の人」と「月給の人」で、担当や確認の流れが分かれている会社ほど、起こりやすいように感じます。

ふたつめは、入社のときの給与のまま、何年も据え置いていることです。
最低賃金はこの数年、毎年のように上がっています。入社時には余裕があった方が、いつのまにか線に近づいていることがあります。

みっつめは、所定労働時間が人によって違うことです。
同じ月給でも、所定労働時間が長い方ほど、時給に直すと低くなります。

そして、最低賃金の確認は、社長ご本人か、社長の奥様がひとりで抱えていることが本当に多いのです。
年に一度のことなので、毎回「どうやるんだったかな」から始まってしまいます。

確認の表をひとつ作っておくだけで、来年からはずっと楽になります。

体の面から見ると——「時給の線」の外側にあるもの

私はヨガのインストラクターでもあるので、どうしてもこちらの話もしたくなります。

最低賃金が上がると、社長は「その分、もっと働いてもらわないと」と感じるかもしれません。
お気持ちはよく分かります。人件費は、会社にとっていちばん大きな費用のひとつです。

ただ、時間あたりの賃金が上がるときこそ、1時間をどう過ごしてもらうかを考えたいのです。

肩や首がつらいまま、腰に違和感を抱えたまま、なんとか1日を乗り切っている——
レッスンに来てくださる方からも、そうしたお声をよく伺います。
こうした状態では、集中が続きにくく、ちょっとしたミスも増えやすいように感じます。

休憩時間にしっかり休める雰囲気があるか。
長く同じ姿勢でいる仕事なら、合間に体をほぐす時間をとれているか。

それだけで何かが治るという話ではありません。
けれど、賃金の線は法律が決めますが、働きやすさの線は会社が決められます。
「この会社は、体のことも気にかけてくれる」と感じてもらえることは、人が辞めにくい会社づくりにつながっていくのだと思います。

今月やっておきたい3つのこと

① 全員の「最低賃金に入る部分」を書き出す

パートさんも、月給の社員さんも、全員です。
給与明細から、通勤手当・皆勤手当・家族手当・残業代(固定残業代を含む)・賞与などを外した金額を出します。

② 月給の方は、1か月平均の所定労働時間で割る

年間の所定労働日数と1日の所定労働時間から、1か月平均を出します。
ここが分からないときは、就業規則や会社のカレンダーを見直すところから始まります。

③ 1,114円を下回る方がいたら、10月4日以降の分にさかのぼって確認する

もし下回っている方がいたら、早めに給与の見直しを。
10月4日以降の不足分は、差額を支払う必要があります(最低賃金法 第4条第2項)。
支払い方や社員さんへの伝え方は、ひとりで悩まず、ご相談ください。

まとめ

- 福岡県の最低賃金は、令和8年10月4日から時間額1,114円です
- 月給の社員さんも対象です。月給を1か月平均の所定労働時間で割って、時給に直して比べます
- 比べるときは、通勤手当・皆勤手当・家族手当・残業代(固定残業代を含む)・賞与などを外します

総支給で見ると足りていても、手当を外すと下回る。
これが、「うちは大丈夫」と思っている会社ほど確認していただきたい理由です。

※ 本記事は2026年10月29日時点の情報に基づいています。内容は、最低賃金法 第4条・第40条、最低賃金法施行規則 第1条・第2条(e-Gov法令検索)、福岡労働局「福岡県最低賃金の改正について」、厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」で確認しています。
※ 業種によっては、地域別最低賃金とは別に「特定最低賃金(産業別最低賃金)」が定められている場合があります。くわしくは福岡労働局のホームページでご確認ください。
※ 計算例は説明のための架空の例です。実際の所定労働時間や手当の中身によって結果は変わります。個別の会社の給与の確認は、無料相談でお聞かせください。

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